第3回日本ファイナンス学会研究奨励賞
長年にわたり、 特別賛助会員として日本ファイナンス学会の活動を支援されてきた丸淳子氏からの申し出をうけて、2013年度に「丸淳子研究奨励賞」が設置され、2022年度の第10回まで授与してきました。
同賞は「日本ファイナンス学会研究奨励賞」として衣更えされ、2025年度は第3回となります。
受賞対象は概ね45歳以下の日本ファイナンス学会正会員であり、選考時点から過去3年程度においてInternational Review of Finance、「現代ファイナンス」、および海外において発行された学術誌等に優れた論文・著作を公刊された方に贈られます。
第3回となる本年度については、審査委員会による厳正な審査の結果、次の論文を発表された淺井顕太郎氏(京都大学法学研究科教授)を受賞者として決定いたしました。
第3回日本ファイナンス学会研究奨励賞受賞対象論文
Kentaro Asai [2024], “Bank Lobbying as a Financial Safety Net: Evidence from the Postcrisis U.S. Banking Sector,” The Review of Corporate Finance Studies 13, 739–774.
- 〈受賞理由〉
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評価の高い有力雑誌に掲載された単著論文である。米国における銀行のロビー活動が、政府支援を受けやすくし、預金者からみた銀行の安全性を向上させていることを実証的に明らかにしている。伝統的な操作変数法を用いた因果推論による検証だけではなく、預金者の行動に関するゲーム理論的モデルを構造推定することにより、銀行の業況の破綻確率への影響と、ロビー活動によるナッシュ均衡の変化が破綻確率に与える影響を識別するなど、既存のbank-runモデルを踏まえつつ斬新な試みがなされている点が優れている。推定モデルを用いた預金保険制度の変更に関する半実仮想シミュレーションは、金融システムに関する政策に直接的なインプリケーションを持つものであり、政策効果の評価手法として、ファイナンス分野でも今後応用が広まることが期待される。
(日本ファイナンス学会2025年度研究奨励賞審査委員会)
- 委員長
- 小倉義明
- 委員
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- 秋吉史夫
- 内田浩史
- 内山朋規
- 沖本竜義
- 鈴木一功
- 鈴木健嗣
- 安田行宏