学会誌のご紹介

現代ファイナンス/No.19

論文名

商品先物:日本の投資家にとっての効用

執筆者名

Gary Gorton/林 文夫/K. Geert Rouwenhorst

詳 細  
No,1/2006-03
開始ページ:p3
終了ページ:p19

商品先物:日本の投資家にとっての効用
Gary Gorton(ペンシルベニア大学ウォートン校/全米経済研究所(NBER))
林 文夫(東京大学/全米経済研究所(NBER))
K.Geert Rouwenhorst(エール大学経営大学院)

この論文では,米国商品先物均等加重指数の,日本の投資家から見た特性を研究する。Gorton and Rouwenhorst[2005]で確認されたドルベースのリターン特性は,円ベースでも基本的には変わらない。すなわち,商品先物指数の円ベースのリターンは,日本株のリターンに匹敵するばかりでなく,そのボラティリティーは日本株より若干低い。また,日本株のリターンとは殆どゼロの相関にあり,日本債券とは負の相関にある。
*本稿の完成にあたり,Dimitry Gupalo氏には研究への助力をいただいたことに,AIG Financial ProductsおよびQ-Groupには財政的支援をいただいたことに感謝を述べたい。Kelley Kirklin氏にはリターン計算に関する貴重な示唆を提供してくれたことに,羽森茂之,和田賢治,家森信善の各氏には日本の文献について適切な指導をいただいたことに対して,それぞれ感謝を述べたい。

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論文名

レンジ及び日中データを使用した為替レートのボラティリティ予測

執筆者名

中窪 文男/森棟 公夫

詳 細  
No,2/2006-03
開始ページ:p21
終了ページ:p48

レンジ及び日中データを使用した為替レートのボラティリティ予測
中窪 文男(学習院大学大学院/経済学研究科)
森棟 公夫(京都大学大学院/経済学研究科)

本稿では,標準偏差や分散共分散行列に代わるボラティリティ及び連動性の推定・予測手法として,相場のレンジ(変動範囲)やハイ・フリークエンシー・データをベースにした実用的な推定法・予測法について述べるとともに,実証データをもとにした有効性の検証を行う。
標準偏差との比較で各種ボラティリティ推定量の効率性を見た場合,取引回数の増加に伴って相対効率性は理論値に近づき,レンジやイントラデー・データなどを使ったボラティリティ推定量の優位性が確認された。さらに,こうしたボラティリティ推定量は真のボラティリティを過小評価し,取引回数の増加に伴って理論通りバイアスが減少することも確かめられた。一方,ボラティリティ予測の精度についても,レンジやイントラデー・データを使用したボラティリティの優位性が示された。
*本稿の作成に当たり,匿名の査読者,東京大学の新井富雄先生及び高橋明彦先生から,貴重なコメントを頂戴しました。この場を借りて,心から御礼を申し上げます。

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論文名

三項分岐木モデルを用いた社債オプションの評価法について

執筆者名

室井 芳史

詳 細  
No,3/2006-03
開始ページ:p49
終了ページ:p70

三項分岐木モデルを用いた社債オプションの評価法について
室井 芳史*(日本銀行金融研究所)

近年,企業倒産に対するリスクを社債などの金融商品の価格に反映させる方法について,大きな注目が集まるようになり,信用派生商品の評価法について数多くの議論がなされている。信用派生商品の評価法には,主に構造型アプローチと誘導型アプローチと呼ばれる二つの評価法が存在している。古くから研究されてきた構造型アプローチは,信用派生商品の価格形成の経済的意味を明らかにする利点を持っている。一方,この10年の間に特に研究が活発になっている誘導型アプローチと呼ばれる方法は,より柔軟に信用派生商品の評価が可能である。そこで,本稿では社債オプションを例に取り,誘導型アプローチを用いた信用派生商品の評価法について考察を行う。
*本研究は室井が東京大学経済学研究科に在籍していた際に行った研究であり,本稿に示されている意見は日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではない。執筆を勧めていただきました東京大学大学院経済学研究科の国友直人教授および匿名の査読者から有益なコメントをいただいたことに感謝の意を申したいと思う。もちろん,本研究における誤りの責任は全て作者本人に帰属する。

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論文名

発行政策と金利の期間構造-英米の比較分析

執筆者名

須藤 時仁

詳 細  
No,4/2006-03
開始ページ:p71
終了ページ:p110

発行政策と金利の期間構造-英米の比較分析
須藤 時仁(日本証券経済研究所)

本稿では,Campbell/Shiller[1991]のモデルに国債の発行満期構成を組み込む形でモデルを拡張することによって,実質金利の期間構造と発行政策(満期構成)との長期的および短期的関係を考察した。対象は1990年代後半以降のイギリスとアメリカである。分析の結果,以下のような特徴を見出すことができた。
イギリスにおいて,発行構成比は,短期的には期間構造に影響を与えないが,長期的には期間構造の中期と長期の部分に影響を与えている。また,総じてみれば,期間構造から発行構成比への短期的な因果関係は否定される。
一方,アメリカでは,発行構成比は,期間構造に対して短期的には影響を与えないが,長期的には期間構造全体に亘って強く影響を与えている。さらに,短期的に,発行構成比は期間構造の変化からイールド・スプレッドを通じた間接的な影響を受けていたことが示された。
以上の分析結果は,発行政策(広義に捉えれば国債管理政策)の目的がアメリカでは経済の安定化,イギリスでは中立性(国債発行が金融市場に与える影響の最小化)に置かれていることを,期間構造との関係から確認するものである。
*本稿の作成に当たり,本誌レフェリー,日本証券経済研究所の若園研究員,山田研究員から有益なコメントを頂きました。記して感謝いたします。

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