学会誌のご紹介

現代ファイナンス/No.24

論文名

リレーションシップ型金融仲介の経済分析*

執筆者名

小倉 義明

詳 細  
No,1/2008-09
開始ページ:p3
終了ページ:p22

リレーションシップ型金融仲介の経済分析*
小倉 義明(立命館大学経営学部)

本稿では,リレーションシップ型金融仲介に関する国内外の経済学的な理論・実証分析を概観し,リレーションシップ型金融仲介の概念とその経済合理性について,一定の整理を試みる.これを踏まえて,最近国内で急速に進展した金融機関の経営統合,あるいは,クレジットスコアリングや市場型間接金融の普及が,リレーションシップ型金融仲介に与える影響について考察する.

*本稿は,2007年11月1日に開催された日本ファイナンス学会第14回研究観望会の報告内容をまとめたものである.参加者の方々から多くの有益なコメントを頂いた.また,本稿の作成にあたり編集者の倉澤資成先生より編集上のアドバイスを頂いた.ここに記して感謝の意を表したい.本稿にあり得べき謝りの責任は言うまでもなく筆者に帰するものである.

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論文名

日本の株式市場の予測可能性*

執筆者名

青野 幸平

詳 細  
No,2/2008-09
開始ページ:p23
終了ページ:p43

日本の株式市場の予測可能性*
青野 幸平(立命館大学経営学部)

本論文では,日本の株式市場において,TOPIX から計算される株式収益率に予測可能性があるか否かを明らかにすることを目的に,Campbell[1991] に倣ってCampbell/Shiller[1988] の対数線形近似の手法と分散分解の手法を利用した分析を行った.日本における超過収益率の分析の結果,予期されなかった株式超過収益率の変動の分散に対して貢献を比較すると,いずれのサンプルにおいても将来の配当支払に関する期待の見直しの分散が大きく貢献しているものの,将来の超過収益率に対する期待の見直しの分散も一定程度の貢献が確認出来るという結論を得た.また,超過収益率の予測方程式に構造変化がある可能性も分析し,1989 年12 月に構造変化の可能性が観測され,構造変化点以降のサンプルの方が,超過収益率についての予測可能性に関して,安定的な結果を得られている事が発見された.

*本論文の作成にあたり,祝迫得夫先生(一橋大学)から多くの指導を受けた.浅子和美(一橋大学),細谷圭(東北学院大学)の両先生から有益なコメントを頂いた.2006年度日本金融学会秋季大会(小樽商科大学)における報告に際し,座長の釜江廣志(一橋大学),討論者の皆木健男(北星学園大学)の両先生,2007年度ファイナンス学会(慶應義塾大学)における報告に際し,討論者の沖本竜義先生(横浜国立大学)から有益なコメントを頂いた.また,匿名のレフェリーと編集者である江口高顯先生,一橋大学経済統計ワークショップの参加者からも有益なコメントを頂いた.記してこれらの方々に感謝を表したい.ただし,本文中に含まれる誤りは全て著者の責任であることは言うまでもない.

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論文名

日本の株式市場におけるボラティリティの長期記憶性とオプション価格*

執筆者名

竹内(野木森) 明香/渡部 敏明

詳 細  
No,3/2008-09
開始ページ:p45
終了ページ:p74

日本の株式市場におけるボラティリティの長期記憶性とオプション価格*
竹内(野木森) 明香(早稲田大学商学研究科)
渡部 敏明(一橋大学経済研究所)

近年,資産価格のボラティリティには長期記憶性があるとの指摘が数多くなされている.そこで本稿では,日経225株価指数のボラティリティに長期記憶性があるかどうか,またボラティリティの長期記憶性を考慮することで日経225オプションの価格をより正確に捉えることができるかどうか分析を行った.さらに株式市場では,価格が上がった日の翌日よりも下がった翌日の方がボラティリティは上昇する傾向があることが知られているため,ボラティリティの長期記憶性に加え,そうした非対称性も考慮できるFIEGARCHモデルを用いて分析を行った.異なる78の期間で擬似尤度に基づくLM検定を行った結果,多くの期間でボラティリティの長期記憶性と非対称性が検出された.また, FIEGARCHモデルを用いることで実際のオプション価格より正確に捉えられることも明らかになった.

*本稿を作成するに当たっては日本銀行金融研究所ファイナンス研究担当スタッフから有益なコメントを頂いた.また,2007年度統計関連学会連合大会(神戸大学)参加者,および大森裕浩氏,大屋幸輔氏,新谷元嗣氏からも貴重なコメントを頂いた.本研究は,竹内が日本銀行金融研究所に在籍中に行った研究であるが,ありうべき誤りは,すべて筆者たち個人に属する.本稿は一橋大学21世紀COEプログラム「社会科学の統計分析拠点構築」および渡部が代表を務める科学研究費補助金特別研究促進費「高頻度データを用いた日本の証券市場の計量分析」より助成を受け購入したデータを使用している.

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論文名

TOPIX収益率のマルコフ・スイッチング非対称確実的ボラティリティ変動モデルによる分析*

執筆者名

石原 庸博/大森 裕浩

詳 細  
No,4/2008-09
開始ページ:p75
終了ページ:p100

TOPIX収益率のマルコフ・スイッチング非対称確実的ボラティリティ変動モデルによる分析*
石原 庸博(東京大学大学院経済学研究科)
大森 裕浩(東京大学大学院経済学研究科)

株式や株価指数等の危険資産収益率のボラティリティ変動モデルとして確率的ボラティリティ変動モデルがしばしば用いられており,そのあてはまりの良いことが知られている.本稿では,収益率の低下が翌日のボラティリティの上昇を引き起こすという非対称性を考慮した確率的ボラティリティ変動モデルにおいて,ボラティリティの2つの状態間の移動がマルコフ過程に従うとするマルコフ・スイッチングモデルをTOPIX収益データに適用して実証分析を行った.パラメータの推定にはマルコフ連鎖モンテカルロ法を用い,更に順列サンプラーを追加することで,どのパラメータにスイッチが起こるのかを探索的に明らかにし,候補となるモデルの絞込みを行った.またスイッチの無いモデルを含めた複数のモデルを推定し,モデルの比較・検討を行った.

*本稿の作成のあたり渡部敏明教授(一橋大学経済研究所),福重元嗣教授(大阪大学大学院経済学研究科),匿名の査読者より貴重なコメントを頂きました.ここに記して深謝致します.

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論文名

社債流通市場における社債スプレッド変動要因の実証分析*

執筆者名

白須 洋子/米澤 康博

詳 細  
No,5/2008-09
開始ページ:p101
終了ページ:p127

社債流通市場における社債スプレッド変動要因の実証分析*
白須 洋子(青山学院大学経済学部)
米澤 康博(早稲田大学大学院ファイナンス研究科)

本稿は,1997年から2002年前半までのいわゆる金融逼迫時における国内社債流通利回りの対国債スプレッド(社債スプレッド)変動を実証的に分析し,その変動要因を明らかにすることを目的としている.分析の結果,金融逼迫時等の状況下では,投資家は,より流動性のある社債又は国債へ,あるいは,より安全性の高い高格付け債に資金需要を逃避させる,いわゆるflight to liquidity あるいはflight to qualityと言われる現象が見受けられた.前者は流動性制約を有する投資家の流動性需要によって,後者は投資家の危険回避度の高まりによってそれぞれ説明できることがわかった.また両現象のうちflight to liquidityの方が強いことも明らかになった.
流動性に関しては,これまでの分析はマーケット・マイクロストラクチャーの視点から見た,執行コストを分析の対象としたものであったが,本稿は投資家の流動性需要という価格に直接的に影響を与える要因を取り上げた点に特長があり,従来の実証分析とは大きく異なる.

*社債及び国債データに関しては日本経済新聞社から,また,格付け情報に関しては格付投資情報センターから多大な援助を受け実施することができた.本稿の作成にあたっては,日本政策投資銀行の研究会,金融工学研究所の勉強会,法政大学比較経済研究所の研究会,武蔵大学経済学部の研究会の参加者の方々,倉澤資成教授(横浜国立大学),2004年度日本経済学会春季大会で発表した際の討論者であった家田明氏(日本銀行),匿名のレフェリー及び編集者の伊藤敬介氏(みずほ第一フィナンシャルテクノロジー)から有益なコメントをいただいた.これら組織及び方々に記して感謝の意を表したい.

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論文名

日本企業の配当政策・自社株買い-サーベイ・データによる検証-*

執筆者名

花枝 英樹/芹田 敏夫

詳 細  
No,6/2008-09
開始ページ:p129
終了ページ:p160

日本企業の配当政策・自社株買い-サーベイ・データによる検証-*
花枝 英樹(一橋大学大学院商学研究科)
芹田 敏夫(青山学院大学経済学部)

わが国全上場企業を対象にペイアウト政策についてのサーベイ調査を行い,回答企業 629社の分析から,日本企業の平均的な認識としてつぎのような結果を得た.配当決定については,一時的な利益の変動では配当を変化させず,長期的に増益が見込めるときに初めて増配する.配当決定は投資決定とは独立に行われている.また,減配回避の考えが非常に強い.一方,自社株買いは配当と比べれば柔軟性をもって決められているが,まだ,本来の役割についての理解が十分でない.現金配当についてはフリーキャッシュフロー仮説を支持しないが,自社株買いについては同仮説を棄却できなかった.ペッキングオーダー仮説,ライフサイクル仮説については,配当,自社株買いともに支持されなかったが,情報効果仮説については,配当・自社株買いとも支持する結果が得られた.ペイアウト政策を敵対的買収防止手段として考えている企業が多く,株主構成の違いもペイアウト政策の意識に影響を及ぼしている.

*本論文は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(B),課題番号17330083,研究代表者花枝英樹)の研究成果の一部である.サーベイ調査(題目『企業の利益分配政策に関する実態調査』)の質問票作成については,同補助金の他の研究分担者である,宮川公男((財)統計研究会),木村由紀雄(目白大学),広田真人(首都大学東京),須田一幸(早稲田大学),胥鵬(法政大学),佐々木隆文(名古屋市立大学),鈴木健嗣(東京理科大学)の諸氏も参加して行われたが,アンケート結果の分析と本論文の執筆は花枝,芹田が担当した.本論文に誤りがあるとすれば,それはすべて筆者ら2人の責任である.なお,草稿に対して砂川伸幸(神戸大学),石川博行(大阪市立大学),広田真一(早稲田大学),宮島英昭(早稲田大学)の各氏,及び編集者の諏訪部貴嗣氏(ゴールドマン・サックス証券)から有益なコメントを頂いた.また,質問票の郵送,回収処理を含めた事務方の仕事について宮崎文男氏に多大のお骨折りを頂いた.以上の方々に感謝申し上げたい.

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