学会誌のご紹介

現代ファイナンス/No.28

論文名

取締役会改革と企業価値の変化

執筆者名

入江 和彦/蜂谷 豊彦

詳 細  
No,3/2010-09
開始ページ:p0
終了ページ:p0

取締役会改革と企業価値の変化
入江 和彦(三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社)
蜂谷 豊彦(一橋大学大学院商学研究科)

会社法によりその権限が大幅に拡大されたことなどから,投資家は取締役会に注目するようになっている.本稿では社外取締役の登用・増員した企業は、配当と自社株買いの和である総還元を同業他社より増加させることで企業価値を創造しているものの,それ以外の企業行動を媒介したり,直接的に作用する効果を通じては,例え独立した社外取締役であっても企業価値を毀損させる場合がある.第二に,執行役員制度を活用せずに取締役会を小規模化した企業は,それが機関投資家の圧力による場合は同業他社よりも配当を払い過ぎることに対してガバナンス効果を発揮し,企業価値を創造しているが,株主還元以外の企業行動や直接的に作用する効果においては,機関投資家による圧力だけでなく,企業が能動的に改革を進めた場合においても企業価値を創造している.

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論文名

日本企業のM&A戦略―サーベイ調査による分析―

執筆者名

花枝 英樹/胥 鵬/鈴木 健嗣

詳 細  
No,4/2010-09
開始ページ:p0
終了ページ:p0

日本企業のM&A戦略―サーベイ調査による分析―
花枝 英樹(中央大学総合政策学部)
胥 鵬(法政大学経済学部)
鈴木 健嗣(神戸大学大学院経営学研究科)

わが国全上場企業を対象にM&Aに関するサーベイ調査を行い,回答企業526社の分析からつぎのような結果を得た.第1に,近年の日本におけるM&Aの主目的は市場シェア拡大の水平的なM&Aが中心で,実際に成果があったと意識されている.しかし,ブランド力や研究開発力といった見えざる経営資源の有効活用については成果が少ない.第2に,M&Aに際しての人員,給与体系,事業部門の調整の仕方の違いがM&Aの効果に大きな影響を及ぼしている.第3に,70%近い企業が成熟衰退事業を現在・今後抱えると答えており,雇用維持を配慮した対処に腐心している.第4に,敵対的買収に対して否定的な考え方が強いが,敵対的買収に対する備えとしては,業績改善,IRの充実,株主への利益還元を重視している.また,防衛策として株式持合いも重視しており,事前警告型買収防衛策を導入すれば株式持合いは必要ないと考えるのではなく,両者をむしろ補完的に考えている.

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論文名

空売り規制の株価安定化機能

執筆者名

大野 弘明

詳 細  
No,1/2010-09
開始ページ:p3
終了ページ:p15

空売り規制の株価安定化機能
大野 弘明(東京国際大学経済学部)

サブプライムローン危機以降,各国で空売り規制が一時的に強化された.本稿は,ポジティブフィードバック投資家,情報劣位の投資家,及び,情報優位の合理的投資家が併存する経済環境における各個人の消費配分を閉形式解で特徴付け,一時的な空売り規制の導入について分析する.得られる結論として,このような経済環境では情報劣位者から情報優位者への富の移転,及び,ポジティブフィードバック投資家から情報優位者及び情報劣位者への富の移転が生じる.適切なタイミングでの一時的な空売り規制の導入は,このような情報格差及び投資スタイルに基づいた富の移転を排除すること,また,株価の情報効率性こそ低下するものの,価格の安定化に貢献することを示す.

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論文名

価格がネットワーク外部性の影響を受ける資産/商品に対するデリバティブの評価,ヘッジと複製戦略について

執筆者名

赤壁 弘康/田畑 吉雄

詳 細  
No,2/2010-09
開始ページ:p17
終了ページ:p43

価格がネットワーク外部性の影響を受ける資産/商品に対するデリバティブの評価,ヘッジと複製戦略について
赤壁 弘康(南山大学経営学部)
田畑 吉雄(南山大学大学院ビジネス研究科)

本稿は,価格がネットワーク外部性の影響を受けるような資産(あるいは商品)に対してデリバティブが書かれた場合,Harrison/Pliscaを嚆矢とする従来のデリバティブ評価法(マルチンゲール評価法)がどの程度有効であるかを検証しようと試みるものである.このために,価格がネットワーク外部性の影響を受ける資産/商品の価格モデルを確率的Verhulst/Gompertzモデルによって定式化し,その確率的性質を明らかにする.次に,価格が確率的Verhulst/Gompertzモデルに従う原資産とBlack/Scholes/Merton価格モデルに従う原資産を交換する,交換オプションをマルチンゲール評価法を用いて厳密に導出することを試みる.前者をエネルギースポット価格,後者をエネルギー商社の株価とすれば,このような交換オプションはエネルギー価格の高騰をヘッジしたいエネルギー需要者にとってメリットがあると思われる.したがって,その適正な価格が求められるというを示すのは応用の観点からも重要である.この目的のために,価格がそれぞれBlack/Scholes/Merton価格モデルと確率的Verhulst/Gompertzモデルに従う原資産の割引かれた価格過程を同時にマルチンゲールにする確率速度Pの具体的な構成法を明らかにする.次に,このPの下で,マルチンゲール評価法を用いて上記の交換オプションを厳密に評価する.併せて,ヨーロッパ型バニラ・コールの評価公式にも触れる.

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