学会誌のご紹介

現代ファイナンス/No.29

論文名

企業間信用の機能

執筆者名

内田 浩史

詳 細  
No,1/2011-03
開始ページ:p3
終了ページ:p48

企業間信用の機能
内田 浩史(神戸大学経営学研究科)

本稿の目的は,企業間信用に関する分析を包括的・網羅的に展望することである.本稿では企業間信用の実態を明らかにした上で,企業 間信用が用いられる理由,ならびに企業間信用の取引条件について,理論分析と実証分析を紹介し,今後の研究の指針を示す.

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論文名

TOPIX現物のRealized VolatilityとRealized Range-Based Volatilityの分析

執筆者名

高橋 慎

詳 細  
No,2/2011-03
開始ページ:p49
終了ページ:p73

TOPIX現物のRealized VolatilityとRealized Range-Based Volatilityの分析
高橋 慎(Kellogg School of Management, Northwestern University)

本稿ではTOPIX現物の高頻度データから計算されるRealized VolatilityとRealized Range-Based Volatilityに長期記憶過程であるARFIMAモデルと短期記憶過程であるUnobserved Components(UC)モデルを適用し,モデルの当てはまりとボラティリティ予測のパフォーマンス比較を行った.最尤法によりARFIMAモデルとUCモデルのパラメータを推定し,RVとRRVを真のボラティリティの代理変数として標本内予測,標本外予測を様々な指標で比較した結果,RVをRRV及びそれらの対数値の定式化において,ARFIMAモデルはUCモデルよりも優れていることが示された.また,標本内予測についてはRRVを用いたARFIMAモデルの,標本外予測についてはRVを用いたARFIMAモデルのボラティリティ予測力が高いことが示された.さらに,マルコフ連鎖モンテカルロ法によるベイズ分析も行い,ARFIMAモデルの実数差分パラメータの事後分布から,RV及びRRVの対数値は非定常な長期記憶過程に従っている可能性が高いという結果が得られた.加えて,ARFIMAモデルとUCモデルのデータへの適合度を周辺尤度とDICを用いて比較し,標本外の予測力を様々な指標で評価した結果,全体的にARFIMAモデルが優れていることが示された.以上の結果から,RVとRRV及びそれらの対数値の定式化と予測において(非定常な)長期依存性を明示的に考慮する必要性が確認された.

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論文名

株主主権は望ましいか?-人的資本企業のモデル分析-

執筆者名

広田 真一

詳 細  
No,3/2011-03
開始ページ:p75
終了ページ:p102

株主主権は望ましいか?-人的資本企業のモデル分析-
広田 真一(早稲田大学商学部)

本稿では,株主主権が企業経営の効率性に与えるマイナス面を理論的に検討する.特に,企業の競争力の源泉として人的資本を考えた場合,株主の権利を強めることが従業員の人的投資を抑制する可能性(ホールドアップ問題)を考察する.その結果,株主権をある程度抑制することが企業全体の価値を高めることが示される.そして,企業ごとの最適な株主権の水準が,企業の特性(人的投資の企業特殊性,プロジェクトの市場価値等)や企業をとりまく環境(外部労働市場の流動性等)によって決まってくることを論じる.このことは,「株主主権は望ましいか」という問いに対する答えが,国,時代,産業,そして企業のタイプによって変わってくることを意味する.さらには,株主と従業員の長期的関係がホールドアップ問題を解決する可能性も検討する.そして,本稿のモデルの結論は,なぜ日本で株主主権が進まないのかを合理的に説明するとともに,日本のコーポレートガバナンスを考察する上で有益なインプリケーションを提供する.

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